「円筒印章」の材料は主に石で、玉髄、紅玉髄、水晶、瑪瑙、ラピスラズリなど。粘土板の上で円筒を転がし、表面に彫られた文様を連続して転写する。所有権の“しるし”として、財貨や貴重な品物を入れた壷・瓶などの容器を封印するのに用いられた。
神聖な力を宿す“護符”(お守り)—
それが「印(しるし)」の発想になって、
古代メソポタミアで原初の印が誕生しました。
今から約七千年前のこと。
その後、紀元前四千〜三千年頃にシュメール人によって「円筒印章」が発明され、本格的な押捺用の印章が始まったとされます。
円筒の表面に楔(くさび)形文字・図案が彫られ、粘土の上を転がして封印などに使われたようです。やがて印章はエジプトやインダスへ伝わり、さらに東方へと伝播。中国において「漢字」と融合し、「紙」の発明や「官印制」と結びつき、世界で最も発達した“印章文化”を開花させることになりました。
この粘土板は、新バビロニア王朝の最盛期に、「バベルの塔」や「バビロンの空中庭園」を建設したことで名高いネブカドネザル二世王(紀元前六〇四〜五六二年)の権力の証として、公共建築物(神殿復興)にその歴史を刻んだものである。
「スカラベ印章」は古代エジプトにおいて、パピルス文書の封泥に押して封緘のために用いられた。スカラベ(黄金虫)は太陽の化身とされ、スカラベ形の小石は魔除けでもあった。印章の腹の部分にはヒエログリフ(神聖文字)が彫られている。
インダス文明の印章は、主に凍石製のスタンプ形で商取引に用いられた。印面は方形のものが多く、インダス(象形)文字とともにサイ・象・虎などの動物、一角獣、神などが刻まれている。また、文字のない幾何学文様を刻んだ円形印章もある。